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「受けてみなあッ!!」<br><br>チェボルグは大砲のような拳を繰り出した。 空気を貫き、音がするくらいだ。<br><br>ベルグリフは素早く剣を構えてそれを迎え撃った。<br><br>右足で前に踏み込み、左足をしっかりと地面に付ける。 剣と拳がぶつかり合った。 双方の魔力が激突して迸る。<br><br>ベルグリフは剣先から左の足先まで魔力の線を一本に繋いだ。 チェボルグの拳の衝撃を魔力に伝わせ、足の裏から地面へと逃がす。<br><br>教練場の床が大きく揺れた。 観衆がどよめく。<br><br>チェボルグが愉快そうに笑った。<br><br>「おお!? 真正面から受け止めるたあ、やるじゃねえの!!」<br><br>「まだまだですよ......!」<br><br>ベルグリフは痺れる腕に顔をしかめる。<br><br>もっと熟達すれば、衝撃を完全に逃がす事も可能なのだという。 何とか受け止める事はできたが、チェボルグの拳は強烈だ、衝撃を受け流し切れずに体が軋んだ。 正面から受けるのは少し無茶のようだ。<br><br>左足を蹴って、義足を軸に回転しチェボルグを後方に受け流す。<br><br>前のめりに倒れかけたチェボルグは、地面に手を突いて軽く一回転して着地した。<br><br>「流石はアンジェの親父じゃねえの!! こいつはどうだあッ!!」<br><br>言うと同時にチェボルグは拳を打ち出した。 腕に彫り込まれた魔術式の刺青が光り、衝撃波が襲い来る。 ベルグリフは剣に魔力を乗せて、縦に一閃、鋭い斬撃を放った。 衝撃波は剣の魔力とぶつかってはじけ、教練場に風となって吹き荒れる。<br><br>手加減などという事を考えるのもおこがましい相手だ。 格上も格上。 むしろ手を抜いてもらわねばならぬほどの相手である。<br><br>ベルグリフはにやりと口端を吊り上げた。 血が滾るようだ。<br><br>いつの間にSランク冒険者と渡り合えるようになっていたのだか、自分でも驚く。<br><br>グラハムとの特訓の成果だろうか? もし、それがなければ初撃を受け切る事すらもできなかったかも知れない。<br><br>ともあれ、思考は剣閃を鈍らせる。 ベルグリフは剣を握り直し 、 次 々 に襲い来るチェボルグの拳を最小限の動きで受け止め 、 受け流した 。<br><br>合間に反撃の隙を伺うが、こちらから攻める程の余裕はない。 流石はSランク冒険者だ。<br><br>だが、それすらも心地よく感じた。 今はこの戦いの高揚感に身を任せていたかった。<br><br>激烈に攻めまくるチェボルグと、相手の動きに合わせて戦うベルグリフとの勝負は熾烈を極めたが、最終的にはベルグリフが膝を突いた。<br><br>緊張感と疲労とで呼吸が乱れてからは駄目だった。 気ばかりはやって、魔力から意識を逸らした時も沢山あった。<br><br>まだまだだな、とベルグリフは苦笑する。<br><br>いや、むしろ伝説の冒険者相手にここまで立ち回れた事は嬉しく思うべきだろうか。 少なくとも、まだ現役でも通用するくらいの腕はあるようだ。<br><br>冒険者に復帰するつもりはないけれど、剣と共に生き続けて来た身としては、格上の相手に惨敗にならずにいられたのは素直に嬉しい。<br><br>「...... 驕るなよ。 こっちは余力も残せてないんだから」<br><br>彼は小さく呟いた。<br><br>想像もしていなかった領域に踏み込んだ事で舞い上がっていては、思わぬ事で足を取られる。<br><br>チェボルグとの戦いは互角に見えたが、相手は息一つ上がっていないのだ。<br><br>Sランク冒険者としてこの老兵と肩を並べるアンジェリンは自分の先にいる。 娘の背中が見えるくらいの所までは来ただろうか。<br><br>もっとこの剣技を体になじませなくてはいけない。 そうすれば、もう少し先の景色が見える筈だ。<br><br>「 違う所へ 、 か 」<br><br>ふと、エルフの少女の銀髪を思い出した。<br><br>ベルグリフは大きく息をついて立ち上がり、剣を鞘に納めた。<br><br>チェボルグが嬉しそうに歩み寄って来て、ベルグリフの肩を叩いた。<br><br>「 がっはっはっは! "赤鬼" の剣技 、 堪能させてもらったじゃないの!! 俺相手にここまでやり合える奴は中 々 いねえぞ! さすがはアンジェの親父だな!! "<br><br>ドルトスが歩み寄って来た。<br><br>「見事なものであるな。 最後は動きがぶれたようだったが、最小限の動きでここまで戦えるとは驚いた。 しかし守りの剣であるな。 アンジェの剣とは違うようにも思えたが......」<br><br>ベルグリフは乱れた息を整えながら笑った。<br><br>「私があの子に教えたのは基礎だけですよ。 きっとあの子はここでの日 々 で自分の剣を身につけたのではないでしょうか 」<br><br>「ふむ...... しかし、お主の剣に大いに触発されたのは確かであろう。 いやはや、これだけの腕前がトルネラのような辺境に埋もれておったとは...... 剣は我流であるか?」<br><br>「ええ。 しかしここ最近良き師に巡り合えましてね。 正直、自分の剣はもう打ち止めだと思っていたのですが、おかげでまだ少し先が見えそうですよ」<br><br>そう言って、ベルグリフがグラハムの名前を出すと、ドルトスとチェボルグは大いに驚いた。<br><br>「 おいおい 、 "パラディン" から剣を教わったってのかよ! がっはっはっは! こいつは強いわけじゃないの!! "<br><br>「あやつはまだ生きておったのか...... 吾輩たちの憧れであったなあ、チェボルグよ」<br><br>「がっはっは! 手合わせを頼んだら手もなく捻られたのはいい思い出じゃねえの!」<br><br>グラハムは、この老兵たちよりも一回り以上上の世代らしかった。<br><br>時代を超えて来る不思議な縁の繋がりに、ベルグリフは感じ入った。<br><br>チェボルグがベルグリフの肩に腕を回した。<br><br>「 酒でも飲んで 、 色nna 々 話を聞かせてもらおうじゃないの! 奢るからよ! "<br><br>「うむ。 今日は体を休めてもらおう。 万全の状態で明日は吾輩の相手をしてもらうぞ」<br><br>「はは、お手柔らかに...... シャル 、 ビャク 、 おいで 」<br><br>ベルグリフが呼ぶと、シャルロッテが興奮したように駆け寄って来た。<br><br>「凄いわ! お父さま、本当に強いのね! ビックリしちゃった!」<br><br>「はは、チェボルグ殿の胸を借りただけさ......」<br><br>ビャクは片付かない顔をして腕を組んで嘆息した。<br><br>「あの馬鹿女が誇張して言ってるだけだと思ってたが...... 本物かよ」<br><br>周囲では野次馬の冒険者たちが大騒ぎしている。 ...
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